あほの同期はあほ

新卒で入った会社には15人ほど同期がいた。

そのうち本社に配属されたのは、私を含めた5人。全員個性が強かった。

「84円切手の上に10円切手貼れ」という指示を受け、84円切手の真上に10円切手を貼り「84+10=10」を成立させた伝説の同期や、飲み会で上司の乳首をつんつんしたり上司の膝の上に座ったりする淫乱同期。そして唯一まともだと思っていた同期はこの度「飲ませたらやばい女」に昇格してしまった。

引用:シャリの上で眠る ウォーキングゲロより

2年ほど経過した頃、支店に配属された同期のMくんが退職するという話が回ってきた。Mくんは同期ではあるが新人研修で挨拶を交わした程度の仲で、「前髪がM字の人」という記憶しか残っていない。総務部だった私は、そんなMくんの退職に必要な資料を作成することになった。

退職関係のやり取りには電話も使った。
Mくんとしっかり会話したのはこの時がはじめてかもしれない。

 

「仕事辞めちゃうんだね、今日手続き関係の書類郵送したからもし分かんないことあったらいつでも聞いて~」

「おつかれ!書類ありがとな!もう次行くとこ決まったから今月でおさらばや笑」

「もう転職先決まったんだ!おめでとう!次はどんな仕事するの?」

「恥ずかしながら水商売やります笑」

「へえ~そうなんだ!名古屋で?」

「そう、名古屋で!」

「名古屋か!じゃあいつか会うかもね!」

「え?おさしみちゃんってああいうところで遊ぶの?!」

「遊ぶっていうか…たまにふらふらしに行ったりするよ~」

「ふらふら!?」

「え、うん。でもああいう人ちょっと苦手だから声かけられる前に早足で通り抜けちゃう笑」

「早足で通り抜ける!?」

 

Mくんの((何をいうてんねんこの女))という空気は電話越しにも漂ってきた。

当時の私は純粋だった。純粋で無知だった。

私は水商売のことを”イオンモールなどでアルカリイオン水を薦めてくる人”だと思っていたのだ。

イオンモールの広い通路に、ウォーターサーバーと簡易的な机と椅子をセッティングし、爽やかな笑顔で小さな紙コップに入ったアルカリイオン水を飲ませようと近づいてくるお兄さん。

当然このアンジャッシュ現象が最後まで続くはずはなく、最終的にMくんに全て説明させることになってしまい、なんともやりきれない気持ちで電話を切った。

 

昼休み。

お弁当を食べながらこの一連の出来事を同期に話した。

彼女は「え!?」という反応の後「水商売って漁業のことだと思ってた!」と言った。

あほの同期はあほなのであった。

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