甘えんぼを超越した元カレコレクション

はじめて彼氏ができたのは大学生だった。友人の紹介で何度か会い、告白されたので付き合うことになった。思い返せば「そんなに好きじゃないけどいいよ」的なセリフを言った記憶がある。人間の持つべき大事なあったけえ部分が欠如している私はたまにサイコパスな一面が出る。(あの人もよくその段階で私の事嫌いにならなかったな)

でも二人で色んな場所に出掛けるのは楽しかったし、おしゃれに気を遣うようになったり、彼氏がいることで弾むガールズトークがあったりと充実していた。

毎日会いたい、常に連絡を取りたい、今どこで何してるの好き好き好きぃい、というタイプの彼から鬼のように届くメールをいつものように捌いていく。その日、たまたま冗談で彼をからかうような発言をした。すると

「も~ぅ、さしみのぃぢゎるぅ~(怒った顔文字)」

という返信が届いた。

私より2つ年上の男性からこの文章はなかなかきつい。薄々感じていた。メールで「は」を「ゎ」と書く人だと気づいた時からちょっと「ん…?」とは思っていた。

当時、「私は」を「私ゎ」にする人は周りにも何人かいたのでぎりぎり耐えられた。が、「いじわる」を「ぃぢゎるぅ~」…?いいのこれ

別の日。これも私が何か言った後

「俺、さしみといると甘えんぼさんになっちゃうぅ~」

と言われた。なるな。母親の前だけにしろ。その年齢だと母親も複雑だろうがな。

これが…付き合うということ…?これが世間一般でいう「彼氏」…?

なにせ生まれて初めての彼氏だった。基準が分からない。それにしても、きつい。もはやちょっと怖い。結局「会いたい電話したい今どこなのメールの返事遅いよ!?」の彼とはどうしても合わず、その後別れた。

しかしこれは序盤に過ぎなかった。

社会人になってから人生で二人目の彼氏ができた。

彼とは社会人サークルで知り合って、1年ほど友人として過ごしたのちに交際することになった。逞しくて、少しがさつで、男らしい人。私と同様に連絡がマメなタイプでないところも楽だった。

が、この人もいい感じに壊れていた。

家でごろごろしている時、彼は甘える仕草で「にゃ~~にゃ~~」とすり寄って来たのだ。「わんっ、う”~、わんっ」と腕の隙間に入り込んできたこともある。念のため言っておくが、彼は人間である。

この犬猫男には浮気をされた後捨てられたので落ち込んだ。悔しさの反動で狂ったように遊んだ。合コン、朝まではしご酒、マッチングアプリetc。

気が済むほど遊び、気が付いたら取引先の営業マンといい感じになっていた。まじめな好青年。背は高いしスーツは似合うし年も近い。時間を重ね、彼はうちに遊びに来るようになる。

刻一刻とその瞬間はやってくる。

夕食後うとうとする彼を起こさぬよう、片づけをはじめると…

「どこにも行かないでよ~こっちでぎゅ~ってするの~~」※酒は入っていません

どうなってるんだ。普通の男はおらんのか。普通の男は。

 

一年後、私はオーストラリアにいた。

ワーキングホリデービザを取得し、現地の語学学校に通う私の隣には台湾人の彼氏。オーストラリアにいるのに私のために日本語を勉強しはじめた彼氏。「それの、なにの、いみ?」(訳:それ、日本語でなんて言うの?)が口癖の彼氏。

彼はあの夜、私の腕を甘噛みしながら確かにこう言った。

「みゃ~~お」

猫の鳴きまね台湾Verだった。

思わず関心してしまった。

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